矯正治療は前歯のでこぼこをきれいにして、はいおしまいというものではありません。 生涯にわたって、健康で美しく機能的な歯並びを獲得することを目的とする医療です。そのためには考えなければいけないことがたくさんあります。 |
歯の最も重要な役割は物を食べること、つまり咀嚼する事です。咀嚼が効率よく行われるために、歯が咬み合った時、上下の歯がなるべく多くの接触を持つことが重要です。歯は、その種類により形も大きさも違い、上下の歯がきれいに並ぶとのこぎりの歯のように山と谷が出来ます。上顎に出来た歯の谷には下顎の歯の山が、上顎の歯の山は下顎の歯の谷に咬みこむのが理想的です。この様な上下の歯の山と谷の関係がきちんと一番後ろの奥歯(第二大臼歯)から出来ていれば、よほど歯の大きさの問題がない限り、前歯のかみ合わせも理想的な状態になることが多いのです。 上顎、下顎それぞれに歯をきれいにそろえることはそれほどむつかしいことではありません。しかし、この様な理想的なかみ合わせを作ろうとした場合、歯を「きれいに並べる」だけではなく、「歯をどこにきれいに並べる」かを計画された治療が行われなければなりません。ひとの顔の形や大きさは皆さん違いますから、顎の大きさや形も様々です。上顎が下顎より少し前にある場合、歯をきれいに並べるだけでは、きれいな歯並びの出っ歯になってしまいます。奥歯のかみ合わせも山と谷の関係にならないことがほとんどです。上下顎の歯を上下顎の前後的な位置の差だけ移動させないと理想的なかみ合わせは出来ないのです。 |
歯はその根(歯根といいます)を顎の骨の中で支えられ、咬み合う力を発揮します。人は1日に数千回も口を開けたり閉じたりするといわれています。また、堅い食物をかみ砕く際には奥歯には平方センチあたり数十キロの力がかかるといわれています。歯科矯正治療によって出来上がったかみ合わせが、この様な負担の繰り返しに対して、長期的に健康的な状態を維持するにはまず、排列された歯がその位置で長期的に健康的な状態を維持出来なければなりません。そのためには、咀嚼するたびに大きな力を受けても安定が維持される位置、つまり歯根が骨の中央に排列され骨にしっかり支えられ、咬む力の方向に沿った位置づけがされている必要があると考えています。 |
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咀嚼運動は、下顎が頭の骨と関節構造を持ち、下顎が筋肉に引っ張られて、開いたり閉じたりする運動により行われます。下顎が閉じる方向の終点は下顎の歯が上顎の歯と当たるところで、そこで上の歯と下の歯が強く当たり食物を粉砕します。この時、かみ合わせのずれがある場合、歯と歯がより効率よく当たるように下顎の位置がずれる事があります。この場合、最も自然に動くことが出来る関節の位置からずれることになり、咬む力以外の負担が顎の関節にかかることになります。 |
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顔との調和のとれた口元は美しく、その笑顔はとても魅力的だと思います。反面日本人の顎骨は奥行きが短く、また鼻や頤(おとがい)の発育が少ないという人種的形態的特徴から、口元が突出した方が多くみられます。口元が突出していると、自然な口唇閉鎖が難しく、常に口が開いている状態となりやすく、 |
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